オーストラリアに移住する前に知っておきたい税金の基本
オーストラリアへの移住を考える上で、知っておきたい事情の一つが、税制・税金ではないでしょうか。移住者にとって最も身近な税金は消費税と所得税です。
オーストラリアでは、居住者か非居住者かの違いで納める税金が大きく異なります。例えば短期滞在の旅行者なら、国外へ持ち出すものに関しては消費税の払い戻しが受けられます。つまり消費税の一部も収める必要がないということです。
消費税と所得税を中心に、オーストラリアの税金について紹介します。
この情報は2023年7月時点の最新情報です。
目次
オーストラリアは消費税も日本とはちがう?
オーストラリアの消費税はGST(Goods and Services Tax:商品サービス税)と呼ばれています。内税となっているため、意識せずに払っている人が多いかもしれません。
税率は10%で日本の消費税と同じです。ただし税率は同じでも、オーストラリアの消費税には最低限必要な食品、医療や医薬品、教育費、水道代など、非課税となる項目があります。
日本でも軽減税率は採用されていますが、非課税ではありません。そのためオーストラリアと日本では、消費税の負担感が異なるようです。
オーストラリアで非課税の公共サービス
オーストラリアでは、公共のサービスにも消費税のかかるものと、消費税のかからないものがあります。公共のサービスの中で上下水道代は非課税です。電気代とガス代は消費税が加算されます。
国際運輸・運送、国際郵便も非課税となっているため、切手を購入する時でも、国内用の切手には消費税が加算されますが、国外用の切手には消費税が加算されません。
教育関連のサービスは非課税です。授業料など学費に消費税は加算されません。保育費(チャイルドケア)も非課税なので、デイケア代には消費税がつきません。
医療に関わるサービスも非課税です。医療行為を受けた場合、入院した場合、医薬品や医療品、リハビリ用品にも消費税はありません。
また一般のサービスの中にも消費税が免除されているものがあります。宗教上のサービス、チャリティなどが非課税です。
オーストラリアで非課税の食品
オーストラリアでは、生活必需品となる食品に消費税はかかりません。では最低限必要な食品にはどんなものが含まれるのでしょうか。
生活に必要な最低限の食品として、肉、魚、野菜、果物、卵、パンなどが挙げられています。ただし免税となるパンは食パンやロールパンで、菓子パンは免税の対象にならなかったり、ミルクでもホワイトミルクは免税ですが、チョコレートミルクは課税対象だったりと複雑です。
消費税は内税のため、普段あまり気にならないかもしれませんが、消費税が加算されているかどうかはレシートで確認できます。
またコーヒーや紅茶も非課税ですが、カフェやレストランなどでコーヒーとトーストを注文したような場合には、消費税が加算されます。その場で飲食しない場合でも、調理済みの食事などをテイクアウトする時は消費税が必要です。
オーストラリア税務局(ATO)の日本語サイトも参考にご覧ください。
The Australian Taxation Office
https://www.ato.gov.au/
オーストラリアで働く際の税率は?
オーストラリアでは、規定の時間以内なら学生ビザでも就労が可能です。ワーキングホリデーの制度を利用して、オーストラリアで働く人も多いでしょう。そこで気になる所得税のお話です。
オーストラリアでは居住者と非居住者で所得税の税率が異なります。この居住者、非居住者のカテゴリーは移民局によるビザのカテゴリーと同じではありません。ATO(税務局)による居住権テストで判別されます。
居住者
ATOの定めた居住者のカテゴリーは、オーストラリアに住むオーストラリア人または永住権の保持者の他、各種就労ビザやビジネスビザなどでオーストラリアに居住する人々にも当てはまります。
課税所得 | 税率・税額 |
0〜18,200 | 0%(免税) |
18,201〜45,000 | 18,200ドルを超えた範囲につき19% |
45,001〜120,000 | 45,000ドルまでの税金5,092ドル+45,000ドルを超えた範囲につき32.5% |
120,001〜180,000 | 12,000ドルまでの税金29,467ドル+120,000ドルを超えた範囲につき37% |
180,001〜 |
180,000ドルまでの税金51,667ドル+180,000ドルを超えた範囲につき45% |
特徴は年収が18,200ドル以下の場合、所得税が免除となることです。ただし居住者は所得税の他に、所得に応じたメディケア税も収めなければなりません。
非居住者
たとえばオーストラリアでは26週間(半年)以内の短期学生ビザでも、短時間の就労が認められています。この場合は税務上のカテゴリーは非居住者です。
課税所得 | 税率・税額 |
0〜120,000 | 32.5% |
120,001〜180,000 | 120,000ドルまでの税金39,000ドル+120,000ドルを超えた範囲につき37% |
180,001〜 | 180,000ドルまでの税金61,200ドル+180,000ドルを超えた範囲につき45% |
非居住者には、居住者のような低所得での免税範囲がありません。ただしオーストラリア国外で得た収入は課税対象外となります。
ワーキングホリデー
オーストラリアの税務上、ワーキングホリデーメーカーのほとんどが非居住者とみなされます。2017年からワーキングホリデーのカテゴリーが別に設けられました。
課税所得 | 税率・税額 |
0〜45,000 | 15% |
45,001〜120,000 | 45,000ドルまでの税金6,750ドル+45,000ドルを超えた範囲につき32.5% |
120,001〜180,000 | 120,000ドルまでの税金31,125ドル+120,000ドルを超えた範囲につき37% |
180,001〜 | 18,000ドルまでの税金53,325ドル+180,000ドルを超えた範囲につき45% |
日本とオーストラリアはNDA(Non-Discrimination Article)を締結しているため、ワーキングホリデーメーカーも居住権テストにより居住者のカテゴリーに入る可能性があります。
オーストラリアでも確定申告(Tax Return)はお忘れなく!
オーストラリアの会計年度は、毎年7月1日から翌年6月30日までです。タックスリターンは、7月1日から10月31日の間に行います。
リターンというため、税金が戻ってくる手続きだと勘違いしている人も多いようですが、タックスリターンのリターンは納税の記録を申告するという意味です。納めた税金が少なかった場合は追徴されることもあります。
同じアルバイトをしていても、学生とワーキングホリデーメーカーは税率が異なりますが、雇用主の認識によって間違った税率で所得税が引かれていることがあるかもしれません。タックスリターンは、そういった問題を是正するための制度です。
よくオーストラリアのタックスリターンとは、日本の年末調整と確定申告が一緒になったようなものだと言われています。
たとえ居住者で非課税枠内の収入であっても、1ドル以上の収入があれば必ず申告しなければなりません。オーストラリアで収入を得た人は、忘れずにタックスリターンの手続きをしてください。
タックスリターンは、自分で所定の書類を記入して税務局に郵送したり、オンラインを利用して申告したりできますが、間違いを防ぐため専門の業者に依頼する人が多いようです。
ワーキングホリデーなどで会計年度の途中で帰国するような場合は、パスポートと航空券を提示して帰国前にタックスリターンを行えます。
またオーストラリアにはタックスリターンとは別に、TRS(Tourist Refund Scheme)という消費税払い戻しの制度があります。旅行者だけでなく、留学やワーキングホリデーでのオーストラリア滞在を終え帰国する人も、一部TRSの申請が可能です。
複雑なオーストラリアの税金を把握しておきましょう
オーストラリアの消費税と所得税についてまとめてみました。オーストラリアでは居住者か非居住者かで納める税金の額が異なります。
たとえば会計年度内に短期留学から学生ビザを切り替えて、長期留学になると所得税の税率が変わります。ワーキングホリデーでも、居住者とみなされるとタックスリターンで税金の還付があるかもしれません。
オーストラリアの税金は複雑です。疑問があれば専門家に相談してみるのも一つの方法でしょう。大切なことなので、しっかり把握しておきたいものです。
出典:ATO(The Australian Taxation Office)
https://www.ato.gov.au/