オーストラリアに移住したら、今まで払っていた年金はどうなる?
オーストラリアに移住したら、今まで日本で払っていた年金はどうなるのでしょうか。移住者もオーストラリアで年金をもらえるのかどうかも気になるところですよね。
オーストラリアと日本は社会保障協定を結んでいます。オーストラリアに移住しても、その居住期間をカラ期間として日本の年金加入期間に合算できる協定です。
オーストラリアに移住を考えている人が、将来のために知っておきたいであろう、社会保障協定とオーストラリアの年金について紹介します。
この情報は2023年5月時点の最新情報です。
目次
オーストラリアと日本の社会保障協定とは?
2000年に日本とドイツの間で締結されて以来、2005年にアメリカ、2008年にカナダなど協定国が増え、現在23カ国と協定が結ばれています。オーストラリアとは2009年に社会保障協定が締結されました。
日本で納めていた年金はどうなる?
オーストラリアとの間で締結された社会保障協定では、日本で納めた年金があれば、オーストラリアに居住している年数も年金加入期間に合算できます。
社会保障協定を結んでいない国に居住した場合、日本の年金受給に必要な加入期間としてカウントされません。社会保障協定を結んでいても、イギリスや韓国など居住期間が合算対象とならない国もあります。
例えばオーストラリアに5年以上、イギリスに5年以上居住した人は、オーストラリアにいた年数のみ日本の年金加入期間に充当が可能です。
ただしこれはカラ期間と呼ばれ、合算対象となるのは年数だけです。相手国で納めた年金があっても受給金額に加算されることはありません。それぞれの国の年金はそれぞれの国に申請して受給することになります。
この協定が締結されたことにより、年金の掛け捨て問題が解消されました。
移住者もオーストラリアで年金はもらえる?2つの年金制度
オーストラリアに住む人は全て年金をもらえるのでしょうか。移住者と言っても就労ビザなど期限付きのビザで居住している場合は、オーストラリアの年金をもらえません。
一方、オーストラリアの永住権(Permanent Visa)を持ち10年以上オーストラリアに居住している場合は、センターリンクを通してオーストラリアの年金をもらえます。
オーストラリアの年金制度は、老齢年金(Aged Pension)とスーパーアニュエーション(Superannuation)という2つの制度で構成されています。
オーストラリアの老齢年金(Aged Pension)
オーストラリアの老齢年金は日本の国民年金と異なり、在職中に納められた保険料ではなく租税を資金としています。
高齢者の基本的な生活水準を支えることを目的としているため、高齢者のための生活保護に近い位置付けです。
日本人がオーストラリアの老齢年金を受給するためには、オーストラリアの永住権が必要です。期限付きの一時滞在ビザで居住している場合は受給できません。
概要や条件
オーストラリアの老齢年金を受け取るためには、まず政府の定める年齢に達していなければなりません。現在オーストラリアはこの受給年齢を段階的に引き上げています。従来65歳と定められていましたが、2023年7月1日以降は67歳に引き上げられます。
オーストラリアの老齢年金は年齢と居住の条件を満たした人に支払われます。老齢年金を受給するためには、永住権を取得し、連続した5年を含み通算10年以上オーストラリアに居住していなければなりません。
年齢と居住の条件を満たすと、収入と資産の審査が行われます。年金を最も必要とする人に支給するためです。
年金所得テスト(Income test)は所得や投資からの収入などをもとに総合的に審査されます。
年金資産テスト(Assets test)は住んでいる家や土地は審査対象外です。投資物件や貯蓄などが審査の対象となります。日本やその他の国にある資産も審査の対象です。日本にある家や貯蓄も資産として取り扱われます。
これらのテストにより年金の支払額が算出され、一定の基準をこえると減額され、十分な所得や資産があれば老齢年金は支払われません。
受給額はどのくらい?
では、十分な資産を蓄えられなかった場合、オーストラリアの老齢年金はいくらもらえるのでしょうか。
老齢年金は基本的に2週間ごとの支給です。単身者か、生活を共にするパートナーがいるかどうかで支給額が異なります。
2周間ごとの受給額 | 単身者 | カップル一人あたり | カップル世帯あたり | 別居中のカップル一人あたり |
基本となる受給額(満額) | 971.50ドル | 732.30ドル | 1464.60ドル | 971.50ドル |
ユーティリティー補助(満額) | 78.40ドル | 59.10ドル | 118.20ドル | 78.40ドル |
電気代補助 | 14.10ドル | 10.60ドル | 21.20ドル | 14.10ドル |
合計 | 1064.00ドル | 802.00ドル | 1604.00ドル | 1064.00ドル |
基本となる金額(Basic rate)に、医療費や電話代などユーティリティーへの補助金(Pension Supplement)や電気代の補助金(Energy Supplement)が加算されます。
別居中のカップルとしての適用は、健康上の理由で同居ができない場合です。
ここから所得テストと資産テストの査定をもとに減額が行われ、受給額が決まります。所得や資産が多い場合、老齢年金は全く支給されません。
オーストラリアのスーパーアニュエーション(Superannuation)
オーストラリアのもう1つの年金が、スーパーと呼ばれるスーパーアニュエーション(Superannuation)です。
オーストラリアの企業で働く全ての人に口座を開設する義務があり、雇用主は給与の10.5%を従業員の口座に入金しなければなりません。
概要や条件
確定拠出年金制度であるスーパーアニュエーション(以下、スーパー)は、日本の厚生年金のようなものとも言われます。企業で働く全ての人が加入するものだからです。ただしスーパーは、給与に上乗せする形で雇用主が従業員のために積み立てる年金です。
原則として60歳になるまでは引き落としができませんが、初めて家を購入する際や、生活困窮が認められた際にはスーパーが使えることもあります。
ワーキングホリデービザや就労ビザで、テンポラリーワーカーとして働く場合でも口座を作らなければなりませんが、 帰国時には解約し、手数料を除いた額を返金してもらうことが可能です。
オーストラリアには銀行をはじめ、スーパーのプランを提供する会社が多数あります。雇用主によってはスーパーの会社が指定されることもありますが、多くの場合は自分でスーパーを選択して口座を作れます。
スーパーは資産運用の長期投資であり、管理する会社は投資会社です。各社の戦略や手数料などを比較して自分のニーズに合う会社を選びましょう。
スーパーには、「口座管理費」「投資手数料」「その他の手数料」がかかります。手数料は会社によって大きく異なるので、スーパーの会社を選ぶ時の重要なポイントです。
スーパーは会社が積み立てる金額に追加して、自分で給料から積み立てることも可能です。スーパーへ入金することにより所得が少なくなるため、これは節税対策にもなります。
個人事業主や専業主婦もスーパーの口座を作り、自分でまたは配偶者の所得から積み立てることができます。ただし定期的に入金を続けないと、手数料で全て相殺されてしまう恐れがあるので注意してください。
スーパーの会社は途中で変更が可能ですし、転職などにより複数の口座を持っている場合は1つにまとめることも可能です。
受給額はどのくらい?
企業で働いている間は、給与の10.5%から15%の税金が引かれた金額が積み立てられ続けます。スーパーがいくらもらえるかは、いくら積み立てたかで異なります。
スーパーがもらえるようになるのは60歳を過ぎて退職した時です。スーパーは、毎年、毎月など口座に残金がある限り定期的に受け取れます。退職時に一括で受け取る方法も選択できます。
ゆとりあるセカンドライフのために
オーストラリアの年金制度は、老齢年金とスーパーアニュエーションの2階建と言われていますが、スーパーに追加入金して貯蓄している人も多く、実質的には個人年金を含む3階建です。
スーパーの情報はATO(Australian Taxation Office)のサイトで確認できます。自分の口座の成長具合を把握して、しっかり老後に備えましょう。
政府も老齢年金の支出を抑えるために、スーパーのキャンペーンを行い奨励しています。現在10.5%と定められている雇用主からの積み立ても、2025年までには12%に引き上げられる予定です。
ゆとりあるセカンドライフを楽しむためには、資金とともに健康であることが欠かせません。オーストラリアの健康保険に関しても、また改めてお話しします。
・出典:厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/
・日本年金機構
https://www.nenkin.go.jp/service/shaho-kyotei/
・Service Australia
https://www.servicesaustralia.gov.au/age-pension
・ATO(Australian Taxation Office)
https://www.ato.gov.au/individuals/super/